してもらって、あとはミシンでどうやら稼《かせ》いでいる、縁遠そうな娘さんなり。いい人だ。彼女に紹介状をもらって、××女性新聞社に行く。本郷の追分で降りて、ブリキの塀《へい》をくねくね曲ると、緑のペンキの脱落した、おそろしく頭でっかちな三階建の下宿屋の軒に、螢《ほたる》程の小さい字で社名が出ていた。まるで心太《ところてん》を流すよりも安々と女記者になりすました私は、汚れた緑のペンキも最早何でもないと思った。
昼。
下宿の昼食をもらって舌つづみを打つと、女記者になって二三時間もたたない私は、鉛筆と原稿紙をもらって談話取りだ。四畳半に尨大《ぼうだい》な事務机が一ツ、薄色の眼鏡をかけた中年の社長と、××女性新聞発行人の社員が一人、私を入れて三人の××女性新聞。チャチなものなり。又、生活線が切れるんじゃないかと思ったけれど、とにかく私は街に出てみたのだ。訪問先は秋田|雨雀《うじゃく》氏のところだった。この頃の御感想は……私はこの言葉を胸にくりかえしながら、雑司《ぞうし》ヶ|谷《や》の墓地を抜けて、鬼子母神《きしぼじん》のそばで番地をさがした。本郷のごみごみした所からこの辺に来ると、何故《なぜ
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