貯金でもして、久し振りに母の顔でもみてこようかしらと思う。私はコック場へ行くついでにウイスキーを盗んで呑んだ。

(七月×日)
 魚屋の魚のように淋しい寝ざめなり。四人の女は、ドロドロに崩れた白い液体のように、一切を休めて眠っている。私は枕元の煙草をくゆらしながら、投げ出された時ちゃんの腕を見ていた。まだ十七で肌が桃色だ。――お母さんは雑色《ぞうしき》で氷屋をしていたが、お父つぁんが病気なので、二三日おきに時ちゃんのところへ裏口から金を取りに来た。カーテンもない青い空を映した窓ガラスを見ると、西洋支那料理の赤い旗が、まるで私のように、ヘラヘラ風に膨らんでいる。カフエーに勤めるようになると、男に抱いていたイリュウジョンが夢のように消えてしまって、皆一山いくらに品がさがってみえる。別にもうあの男に稼《かせ》いでやる必要もない故、久し振りに古里の汐っぱい風を浴びようかしら。ああ、でも可哀想なあの人よ。

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それはどろどろの街路であった
こわれた自動車のように私はつっ立っている
今度こそ身売りをして金をこしらえ
皆を喜ばせてやろうと
今朝はるばると幾十日目で又東京へ帰って来たのではないか。

どこをさがしたって買ってくれる人もないし
俺は活動を見て五十銭のうな丼《どん》を食べたらもう死んでもいいと云った
今朝の男の言葉を思い出して
私はさめざめと涙をこぼしました。

男は下宿だし
私が居れば宿料がかさむし
私は豚のように臭みをかぎながら
カフエーからカフエーを歩きまわった。

愛情とか肉親とか世間とか夫とか
脳のくさりかけた私には
みんな縁遠いような気がします。

叫ぶ勇気もない故
死にたいと思ってもその元気もない
私の裾にまつわってじゃれていた小猫のオテクサンはどうしたろう
時計屋のかざり窓に私は女泥棒になった目つきをしてみようと思いました。
何とうわべ[#「うわべ」に傍点]ばかりの人間がうろうろしている事よ!

肺病は馬の糞汁《ふんじゅう》を呑むとなおるって
辛い辛い男に呑ませるのは
心中ってどんなものだろう
金だ金だ金が必要なのだ!
金は天下のまわりものだって云うけど
私は働いても働いてもまわってこない。

何とかキセキはあらわれないものか
何とかどうにか出来ないものか
私が働いている金はどこへ逃げて行くのだろう

そして結局は薄情者になり
ボロ
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