かねえと感心していた。
「その純文学の方は誰が一番収入があるのでしょう」
そんなことも訊かれたが、たいてい名前は派手でも、私と似たりよったりでしょうと威張って云うより仕方がない。――十年前から一度も値上げにならない原稿料で、私は割合平気でしし[#「しし」に傍点]としている。税金も、吉屋さん位になりたいのは山々だけれども、これは生れかわって来ないことには、とうてい駄目なことだろう。「だって朝日新聞にお書きになったでしょう」とも、話が出たが、一万円とまちがわれたのでは浮ぶ瀬もないと思った。二十七回書いても新聞小説だし、二百回書いても新聞小説なのだから困ってしまう。一日胸がどきどきして困った。女学校へやっている姪《めい》の顔を見ても腹がたって、「税金が増えるのよ、怖かないか」と云うと、怖いと同情してくれた。
「いったい、税金って何に使うか知ってる?」と十五歳の姪に尋ねると、「ほら、大名《だいみょう》旅行ってあるじゃない、あんなのじゃないの」と云う答えだった。そうかなアと思った。
――私は、草花が大好き、花ならば何でもいい。冬の剪花は、手入れがいいので三週間位もたせる[#「もたせる」に傍点]
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