は、随分|飢《う》えたような生活だったので、少しばかり楽になると、私は手におえない浪費者で、何でも買ってみたくて、なりあがり者の気質を多分にそなえているのだ。なりあがりの陽気者のくせに、厭に孤独で、孤独のなかの自分にだけは徹しているので、友達がなくても、そんなに苦しくはない。女だから、女の友達をと考えるのだけれども、自分が足りないのか、向うが私を厭な奴だと思うのか、のぼせあがるようなひともない。男の友達は心に良薬、口に毒薬で、なかなかシゲキして貰える。
詩を書くこと、絵を描くこと、いずれも好きで、自分の仕事のなかに、詩や絵の類似品を持っていることが、私の仕事の味噌だけれども、作家には、色々な波があってもいいと思う。今年は少し休息して、遠くへ行かれるものなら、ひとりでこつこつ目的もなく歩いて来たいと思っている。
底本:「林芙美子随筆集」岩波文庫、岩波書店
2003(平成15)年2月14日第1刷発行
2003(平成15)年3月5日第2刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:林 幸雄
校正:noriko saito
2004年8月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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