私の先生
林芙美子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)尾道《おのみち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)文章|倶楽部《くらぶ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おぼろ月夜[#「おぼろ月夜」に傍点]と
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私は十三歳の時に、中国の尾道《おのみち》と云う町でそこの市立女学校にはいった。受持ちの教師が森要人と云うかなりな年配の人で、私たちには国語を教えてくれた。その頃、四十七、八歳位にはなっていられた方であったが、小さい私たちには大変おじいさんに見えて、安心してものを云うことが出来た。作文の時間になると、手紙や見舞文は書かせないで、何でも、自由なものを書けと云って、森先生は日向《ひなた》ぼっこをして呆《ぼ》んやり眼をつぶっていた。作文の時間がたびかさなって、生徒の書いたものがたまってゆくと、作文の時間の始めにかならず生徒の作品を一、二編ずつ読んでは、その一、二編について批評を加えるのが例になった。その読まれる作品は、たいてい私のものと、川添と云う少女のもので、私の作品が、たいていは家庭のことを書いているのに
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