牛はびっくりして狐をみました。
「あなたはいったい、どなたさまですか。」
と、狐がききました。
牛は正直者でしたから、わたしは、桑助さんの家の牛で、赤兵衞というものだとこたえました。狐は王樣のようだと感心しました。
「そうですか、わたしは山の中から來た六兵衞という狐ですが、このさきへは行かれますか。」
と、たずねてみました。
「ええ行かれますとも、道はどこまでもつづいていて、にぎやかな河口までつづいていますよ。」
と、教えてくれました。
狐はていねいにあいさつをして、雨の中を歩きました。しばらく行くと、小さい村がありました。村のとっつきの家では、鷄が三びきほど遊んでいました。狐は何も彼も珍らしくて仕方がありません。これは何というものだろうと思いました。それで、また、ていねいに頭をさげますと、三びきのあわてものの鷄はけたたましくなきたてて鷄小舍の屋根へ飛び上ってゆきました。
すると、家のなかから、おそろしく脊の高いおじいさんが棒を持って出て來ました。
「これッ、狐の奴め、お前、うちのとりを食うつもりだなッ。」
狐はびっくりしました。鷄なんか一度も食べた事がないのに、この人間
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