龜さん
林芙美子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)とほりかかって[#「とほりかかって」はママ]
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むっくり、むっくり、誰もとおらない田舍みちを、龜さんが荷物を首にくくりつけて旅をしていました。みちの兩側は廣い麥畑です。
麥畑の上をすずしい風がそよそよと吹いています。「ああ、くたびれた。どこへ行ったら水があるのかな。」龜さんは首を持ちあげて、じっとあたりをみました。
どこかで蛙の合唱がきこえます。何でも、このへんには蛙の小學校があるのでしょう。聲をはりあげて蛙がうたっています。龜さんは荷物をおろして、どっこいしょと石ころの上にはい上がってやすみました。
「おいおい、誰だ、重くてつぶれそうだよ。」
小さい聲がきこえます。龜さんはびっくりして石から降りました。
「誰だね……。」
龜さんがきょとんとしている眼の前に、にょろにょろと小さいみみずが出てきました。龜さんはびっくりして
「ああおどろいた。」
といいました。みみずはまだ子供です。
「おいおいみみずさん、このへんに水をのむところはないかね。」
龜
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