まって歌をうたいました。
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とこしえにうつくしき海の国
あらそいをさけ手をつなぎ
海の神に祈る海のはらから
われらたのしくまなび
われらたのしくはたらく海の国
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 女の先生が昆布で出来た楽器を鳴らしています。校長先生は、鯖村で貰った人形と云うものを村の衆にみせました。
「人間というものは尻尾がねえンだな。おかしなものだね。尻尾がないと、こっけいに見えるね。戦争って何だろうね。どうして戦争するンだろうね。いっぺんでいいから、人間の国に遊びに行ってみたいものだね。」
 ひらめの村の衆がささやいています。すると、ひらめの村の老村長は、えへんと咳ばらいをして、
「よその世界をのぞきに行くのは地獄に行くようなものです。海の世界ほどよいところはありません。この間も、話にきくと、南に行った鱶村の衆は、人間の戦争を見に行って随分殺ろされたそうです。近々に帰えって来るということです。鱶村の衆でさえ住めないものを、私達がだいそれた事を考えてはいけません。さア、今日の祈りをいたしましょう。」
 村の衆も、学校の生徒も、輪になって、暗い海の底で祈りの歌をうたいまし
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