とても重いので、眼鏡のつるに、木で出来たブイがついていました。ブイが両側についているので、大きい眼鏡はゆらゆらと、校長先生のひくいおはなのまわりに、丁度都合よくつりあっています。
海のなかでは、食べものも何も持って歩くことがないのです。何でもお金と云うものがいらないので、どこでも自由に食べる事が出来ました。
ひらめの生徒の行列は校長先生の後から、愉しそうに泳いでゆきました。
昆布の林を抜けたり、サンゴの森をくぐって行きました。時々、ぶりの家族が泳いで来ます。すると、体操の先生が、ピッと笛を吹きます。生徒は校長先生をまんなかにして、岩の上にぺたっと張りついて、ぶりの家族をやりすごしてやります。
やっと鯖村へ着くと、青いユニホームの鯖の子供が沢山岩の門まで迎えに来ました。岩の門をくぐると、驚いた事に、銀色の大きい怪物が、羽根に真紅なまるいマークをつけてどっかりと砂地にころんでいました。
まことに珍らしいものです。校長先生は、眼鏡のブイを握ってじいっと見とれていました。鯖村の村長さんも女の方です。とてもよくふとった方で、きれいな藻で首巻きをつくって、それを自慢そうに脊中にかけていら
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