てもらって、それを見せてくれました。とてもきれいです。
 或日、おとうさんと銭湯のかえり、僕は、沢井君のところの小池君に道で会いました。小さい子どもたちが、石をぶつけっこしているのをとめているのです。
「けんかしてためッ! けんかするといけないから、みんなその石すてなさい、いいか、けんかしてためよ、けかするからね」おとうさんはにこにこ笑って、小池君の頭をなでました。
「君はいい子だねえ。健ちゃんところにも遊びにおいでよ。健ちゃんのところには鶏がいるし、大きい金魚もいるよ」
 小池君はきまりわるそうにしています。
「遊びにお出でね」僕もそういいました。すると、小池君は、いかにもうれしそうに、
「ぼく、健ちゃんのうち知ってるよ。あすことこに大きい犬いたろう? あの犬、ぽくかってたのよ」
 といいました。
 道理で、野良犬のくせに、ふとっていたものだと思います。
 僕とおとうさんの吹く口笛に、小池君もあわせて吹いています。
 おとうさんが、
「健坊、小池君っていい子だねえ」っていいました。
「沢井さんのおとうさんってりつぱな人だねえ、一度、どんな人なのか会ってみたいもんだ。ふつうの人にはでき
前へ 次へ
全79ページ中78ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング