王子の子どもが、いつか粉を持って来てくれると手紙をくれましたけれど、早く持って、来てくれるといいなと思いました。
きもを焼く匂いはとてもいい匂いで、好きです。これはおかあさんに早く元気になってもらうようにあげるのです。
七時ごろ、やっとパンが出来ました。
おかあさんは、熱があるので、パンはほしくないといって、うなぎのきもと、生卵を一つ食べました。
僕たちは茶の間で食事をしました。
パンはとてもおいしくて、一口食べると舌のなかにつばきがあつくなるような気がします。ふだん草のお汁と、小さいいわしの焼いたのがあって、とてもにぎやかな食事です。
おとうさんはごはんがすむと、「ああくたびれた」といって、
「静子、お前、あとかたづけをたのむよ」
とおっしゃいました。僕は静子に「あとかたづけしてくれよ」
というと、
「あら、兄さんはずるいわ、おとうさんの真似をしていけないわ。何でも助けあってやらなくちゃあずるいわ」
といいます。
僕は仕方がないから、皿をふいてやる役目をしました。
おかあさんがお水がほしいというので持って行き、
「おかあさん、気分はどうですか」
とたずねますと
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