だの、カノコシボリだのという札をぶらさげるので、みんな笑います。金井君はすぐその種をほじくって捨てるので、大谷君がちょっと気の毒になります。
16[#「16」は縦中横]
今日は、おかあさんのぐあいがわるいので、僕は畑をしないで、早くお家へかえりました。朝、お医者さまがみえたのだそうで、おかあさんは当分しずかに寝ていなければなりません。おかあさんはあかい顔をして、手拭を頭にあてていました。
「おかあさま、大丈夫なの」
おとうさまにききますと、
「ああ、すぐなおるよ。つかれも出たんだし、栄養失調もあるのだから、当分寝ててもらうのさ」
とおっしゃいました。
静子もとても心配しています。
おとうさんは、近所のやみ市へ卵を買いに行くのだというので、静子や弟を留守番にして、僕とおとうさんは出かけました。
「おい健坊!」
おとうさんがまじめな顔でいいました。
「おかあさんは、胸も少しわるいから、こんどは少し病気が長びくかもしれないけれど、がっかりしないでやるんだよ――いよいよ、お家もこれから大変なのだから、へこたれちゃいけないね。おとうさんは、会社をあまり休むわけには行かな
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