行きました。金網のかわりに、竹の細いので格子をつくってやるのです。目白へ出て、学習院の通りを歩いていると、僕たちぐらいの男の子が、
「八王子へ行くのはこの道を行ったらいいの」とききます。
破れたシャツと、あしの出たつぎはぎだらけのズボンで、小さい風呂敷包を持っています。髪の毛が随分のびていて大人のようにつかれた顔をしています。
僕たちは八王子を知りません。
「君はどこから来たの」
金井君がたずねました。
「遠いところから来たの‥‥」
「遠いところってどこなの」
「深谷というところから歩いて来たの」
「へえ、深谷ってどこだい、健ちゃん知ってる‥‥」
深谷というのは、どこだか知らないけれども、おかあさんは、ねぎの話が出ると、すぐ、深谷のねぎはおいしかったというから、ねぎの出来るところから来たのかも知れないと思いました。
「ねぎのたくさん出来るところだろう‥‥」
僕がたずねると、その子は、「うん」といいました。
たぶん、おなかがすいているのでしょう、大変元気がありません。白目のところが青い、眼の大きい子です。
「八王子って遠いんだろう‥‥何しに行くの‥‥」
「おばあさんがいるんだ
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