やせていたんだからね」
古竹でさくをつくりながら、金井君はいろいろの話をします。
「でも、畑をつくるべしさ。僕は大人になったら農林技師になるつもりさ。君どう思う」
「そりゃあいいねえ」
金井君のおとうさんはまだジャワからかえりません。だから、僕のおとうさんが早くかえったのをいいなあとうらやましがります。
「ねえ、君、僕のおとうさんて、山本先生と同じように、ぬっとしててすこしもしからないよ。一度だってしかったことがないよ。――大きな大人のくせに、僕に何だってそうだんするんだぜ」
「僕のおとうさんだってしからないよ。そうだなあ、うそをいうとしかるね」
「へえ、君、うそをつくのかい」
「ああ二三度あるよ」
「いやなやつだなあ」
「仕方がなくてうそをついたのさ」
「どんな事でだい」
「おなかがすいている時に、すかないなんていうと、おとうさん、ちょっとしかるよ。ごまかすのはきらいだぞオっていうんだ」
「そりあそうさ」
「だって、みんながかわいそうだもの、僕のところは、君のとこみたいに金持ぢゃないからね」
「金持ぢゃないよ」
「だって、君のところへ行くと、いつだっておやつがあるだろう。金持だよ
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