ておいでになったそうで、私のうちでは、こんな大きいお魚なんてみたことがありませんのでびっくりしました。
 たべてしまうのが気のどくみたいにりつぱなおさかなです。くろだいって、えいがでみるようなおさかなです。目玉がぐりッと大きいので、私の友だちのカツチャンのようです。かたみはお正月にたべるのだっておかあさまがおっしゃいました。
 おかあさまは、何年ぶりでこんなおさかなを料理するだろうとおっしゃいました。私のおうちはこんなおさかなをたべられるほどぜいたくなうちではないので、みんなでこのおさかなをたのしみにながめました。わたしたちもうれしくおもいましたけれど、おとうさまはまるでこどもみたいに、ものさしをもって来てはかっています。何百円ってするのでしょうけれど、そばにおじさんがいましたのでききませんでした。
 おじさんは、これから東京で、食料品のみせをだすのだそうです。三晩ほど御やっかいになりますといいました。おじさんのもっていらっしたお米が白いので、おかあさまは、白米ってきれいね、とおっしゃいました。
 私はお客さまがいらっしやるのはすきです。くろだいをもらったからではありません。

 静子
前へ 次へ
全79ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング