おにおん倶樂部
林芙美子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)巖ちゃん[#「巖ちゃん」は底本では「巖ちん」]
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 大木繁、滑川浩太郎、片貝巖、奧平善一、これだけが、おにおん倶樂部のメンバアである。
 おにおん倶樂部の名付親は、巖ちゃんの兄さんの庄作さんで、英語でおにおんとは、玉葱の意味だそうである。この四人はとても仲良しだけれども、四人とも氣が弱くて、何にでも感激する。そしてすぐ泣くと云うので、庄作さんが、おにおん倶樂部とあだなをつけたのだそうだ。繁ちゃんは六年生、浩ちゃんと善ちゃんは都立×中の一年生、巖ちゃん[#「巖ちゃん」は底本では「巖ちん」]は××商業の一年生である。
 空襲前のころは、四人とも麹町×町の同じ町内にいたのだけれども、空襲で自分の町が燒けてしまうと、この四人はてんでんばらばらになって、終戰後、お互いの住所が判って、また四人はいっしょに會うようになった。
 繁ちゃんは三鷹の叔父さんの家にいた。
 浩ちゃんは鎌倉雪の下のお姉さんのお嫁入りさきにいた。
 巖ちゃんは中野の小瀧町に借家をして住んでい
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