、オルガン習はせてくれるの?」
「さうね、もう三つねんねしたら、オルガンの先生ンところへ行きませうね」
「さう‥‥お祖母ちやん嘘吐きだナ、オルガンの先生なンかみンな死ンぢまつてゐないつて云つたよウ」
「それは、竜さんが、あんまりおねだりするからよ、学校から帰つたら、おとなしくしてるの、さうしたらオルガンの先生ンところへ連れてツたげますよ」
 せん子に似て、子供の唇にも可愛い黒子があつた。
 バンド・セールをつけた子供の手を引いて郊外の停車場まで来ると、
「では、行つて来ますよ、お母さんをお送りしたら、自動車に気をつけて真ツ直ぐに帰るンですよ。お土産を持つて帰りますからね」
「うん‥‥」
「オヤ、どうしたの、呆やりしたりなンかして、え、竜ちやん!」
「何でもないんだよツ、お父ちやんが 淋しさうだから早く帰つてねツ」
「竜さんの馬鹿、ホッホ……あンたが淋しいンぢやない‥‥」

 せん子は、胸がふくれあがりさうにうれしかつた。どんなにヒクツな、いまの生活であらうとも、耐へて行かなければならないと考へるのであつた。
「ひがんでいふンぢやないが、実際お前にとつて俺はやつかい者だね」
「まア水くさ
前へ 次へ
全30ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング