。
場所は直子の郷里京都であつたが、まだハツキリした事は書いてなかつた。
「昔こゝにゐたひとなンですの‥‥まアこはいツ」
女給らしくなつた澄子が岡田の肩から覗き込んで、牧博士の写真を見てゐる。
さくらも、操も サトミも、百合子も、ドシンと墜ちたやうな顔であつたが、それよりもひどく心に耐へたのは、せん子と粒子であつたらう。
「とう/\やツちまつたのねえ!」
粒子は何を思つたのか、ジジ‥‥と空廻りして鳴る、雲の飛ぶよな今宵のあなた[#「雲の飛ぶよな今宵のあなた」に傍点]のレコードを針を変へてはいとしにさうに[#「いとしにさうに」はママ]静かに廻し始めた。
底本:「林芙美子全集 第十五巻」文泉堂出版
1977(昭和52)年4月20日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※片仮名の拗音、促音を小書きするか否かは、底本通りとしました。
※疑問点の修正に当たっては、「清貧の書」改造社、1933(昭和8)年5月19日発行を参照しました。
入力:林 幸雄
校正:花田泰治郎
2005年8月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全15ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング