います。失礼ながらおやしきの勝手を心得ております長庵、ひとりで引きとらせていただきますでございます」
 言っているうちにも、サッと濡れた風が吹き込んで来て、お部屋の戸障子《としょうじ》がガタガタと鳴る。木の枝の騒ぐ音が何やら物すごく聞えてくる。見るみる世の中が真っ暗になって行くような心もちで、その闇《くら》い中で、脇坂山城守の机の上にひらいてある書物が、風に煽《あお》られてヒラヒラ白く動いて見える。
 山城守は、すわったまま身を屈ませて、軒の端ごしに空を仰いだ。
「これは、暴風雨《あらし》になりそうだぞ。恐ろしいあらしに――」
 言葉の終らないうちに、ゴウッ!――家棟《やむね》が震動《しんどう》して、パラリ、屋根のどこかに音がしたかと思うと、冬の雨は脚《あし》が早い。早やつづけさまに軒を叩《たた》いて――本|降《ぶ》りだ。
「こりゃいかぬ!」
 山城守は、起《た》ち上った。あけ放してある縁から雨滴《うてき》が躍《おど》りこんで来て、畳を濡らし、長|駆《く》して山城守の膝を襲《おそ》いそうにするので、かれはあわて出したのだ。立って行って、自分で障子をしめようとした。そして、その廊下に、ま
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