目八分に捧げて先に立つ。その後から、第一番に松平|越中守《えっちゅうのかみ》、久世大和守《くぜやまとのかみ》、松平|周防守《すおうのかみ》[#ルビの「すおうのかみ」は底本では「すほうのかみ」]、牧野|備中守《びっちゅうのかみ》、岩城播磨守《いわきはりまのかみ》、それにお側御用御取次水野|出羽守《でわのかみ》の以上六名が、いずれも一人一役のお歴々である。松平越中守は青竹を削《そ》いだような顔に鋭い微笑を浮かべて、久世大和守は例によって太い眉毛をぴくぴく[#「ぴくぴく」に傍点]させて、でっぷり肥った牧野備中守は上眼使いに顎を引いて、小男の岩城播磨守は猪首《いくび》に口をへの字に曲げて、長身、痩躯《そうく》、白皙《はくせき》、胡麻塩《ごましお》、各人各様《かくじんかくよう》の一癖ありげな面だましいだ。左右の肩衣《かたぎぬ》を一斉に振って、のっさのっさと長袴の裾を捌《さば》き、磨き抜いた板廊《いたろう》を雁のように一列になって退《さが》って来る。
何か頬を上気させた水野出羽守は、いつもと同じせかせか[#「せかせか」に傍点]した歩調で殿《しんがり》である。
二
続いて、廊下の
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