大迫玄蕃《おおせこげんば》、妙見勝三郎《みょうけんかつさぶろう》、保利庄左衛門《ほりしょうざえもん》、博多弓之丞《はかたゆみのじょう》、笠間甚八《かさまじんぱち》、箭作彦十郎《やづくりひこじゅうろう》、松原源兵衛《まつばらげんべえ》――居ならぶ御書院番衆《ごしょいんばんしゅう》の頭が、野分《のわけ》のすすきのように首頷《うなず》き合い、ささやき交《かわ》して、眼まぜとともに裃の肩がざわざわ[#「ざわざわ」に傍点]と揺れ動く。
同時に、色いろの声がした。
「戸部氏のご立腹、ごもっともでござる。下世話《げせわ》にも、とかく女子《おなご》にもてる男には嫌なやつが多いと申す、ぷッ! 高慢面《こうまんづら》、鼻持《はなも》ちならぬわ」
「神尾氏ッ! こウれ! 無言は非礼、何とか早速御挨拶あって然るべしじゃ」
「旨いことを並べて園絵どのを蕩《たら》し込む口はあっても、われらに応対する口はないと言わるるのか?」
「めでたい年頭、ことには城中、それがしとてかく大声《たいせい》を発しとうはないが、実もって常日《じょうじつ》、神尾氏の振舞いには眼にあまる角《かど》が少なくござらぬて」
これは、ふたたび
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