何しにここへ?……その十番首は貴殿のしわざか」
「さよう。ちょっと捌《さば》いて首に致した。どうせ喬之助どのが亡者と貼紙してここへ寄こしたのじゃからナ」
「神様だけに、言うことがさっぱりわからぬ」
「今にわかる」と魚心堂は、長庵とお六が、門弟どもを呼んで来ると言って玄関のほうへ走り去ったあと、ひとり造酒のかげに顫《ふる》えているお妙を見やって、
「ほんとの用は、その娘だ。その娘を取り戻しに来たのじゃ。わしが下谷まで送って進ぜようと思ってナ」
「そうか、この娘を取り返しに来たのか。そうと解れば、遣らぬ!」造酒はここで大声を揚げた。「こうするがどうだ?」
 こうする……どうするのかと思うと、やにわに大刀《だいとう》銀百足《ぎんむかで》の鞘を払った造酒だ。お妙の胸ぐら取ってそこに引き据えると同時に、紙のように白い咽喉首《のどくび》に切尖《きっさき》を擬《ぎ》した。
「来るか。来ると、一突きだぞ……」
 が、その時、長庵とお六に教えられた三羽烏他一同が、ドドドドッ! と跫音《あしおと》荒く踏み込んで来たので、あるいは敵か?――と、造酒、ちょっとそっちへ注意が走った。いや、注意が行ったというまで
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