になったことから、右近と肝胆相照《かんたんあいて》らす間柄になり、喬之助の秘密にも関与して、一|臂《ぴ》の力を藉《か》すことになっているのだが――その晩は別に、そんな思惑《おもわく》があって歩いていたわけではない。
例の高い樹の上に胡坐を組んで、坐禅のような恰好《かっこう》で眠ろうと努めていたのだが、妙に眼が冴えて眠れないので、ブラリと町を歩きに来ただけのことである。
深夜の漫歩《まんぽ》……目的はない。
火の用心のおやじに出会う。
おやじも魚心堂先生を知っているから、
「これは先生、大分|宵《よい》っ張《ぱ》りでいらっしゃいますね」
挨拶して通る。先生はケロリとして、
「宵っ張りではない。早起きである。もう起きたのだ」
人を喰った返辞《へんじ》だ。
笑い声とともに帯屋小路を歩いて来ると、
「じゃア、わたしがお預りしてお家まで送って行って進ぜますから、ナアニ、御心配なく――」
大声がして、喧嘩屋の店から出て来た男女ふたりの人影がある。
知らずのお絃《げん》の声で、
「それじゃア先生、お頼《たの》みしますよ。その娘さんのお家は、黒門町とか言いましたねエ」
これがハッキ
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