やい、話せるぞ」と、力いっぱい背中を叩《たた》きながら大声に笑いたかった。「おめえもやっぱり、弱いほう、理《り》のある方へ味方しようてえのかい。江戸っ子だ。嬉しい江戸っ子だ……」
が、現実にはかれは、何気なく言っていた。
「殺さねえように捕まえる。それで、相手が刃物を持っていると、こっちも刃物で抗《むか》って行かにゃならねえ」と、考え考え首を捻《ひね》って、「すると、むこうも危えし、こっちもあぶねえから、そこで、逃げるように……フウム、ところで、先様《さきさま》アいつも人斬庖丁《ひときりぼうちょう》を離したこたあねえのだから、いつも逃げ――」
金山寺屋は、ぴったり平《ひ》れ伏《ふ》した。
「いや、解りました。解りましてございます」
何だ、まだそこにいたのか……というように、忠相の眼が音松へ向って、
「よい、よい、行け」
切長の眼が、射《い》るように音松の横顔に据《す》わっていた。
三
切長の眼が、射るように喬之助の横顔に据わっていた。
荒木陽一郎だ。
畳に両手を突いた不動の伏像――喬之助を包囲して、瞬間、声もなく立ちはだかっていた十三人の番士と源助町の一統
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