《さすが》に血筋は争えない。剣を取っては、番部屋第一の名があったもので、年齢は四十五、六、肚《はら》も相当に据わった、まず、御書院番士中では錚々《そうそう》たる人材だ。その、荒木陽一郎が、祖先譲りの朗快《ろうかい》な声で――と言ったところで、荒木又右衛門の声のことが記録に残っているわけでもないが、豪傑だったから、声も偉そうだったに相違ない。とにかく、決して豪快な声ではなかったと証明出来ない以上、どんなに豪快な声だったと言ってもさしつかえあるまい――ところで、子孫の荒木陽一郎は、又右衛門ほどの傑物《けつぶつ》ではなかったが、声は、素晴しく強そうなのだ。ラジオの拡声機《かくせいき》で聞く猛獣の咆哮《ほうこう》のようだ。
「神尾喬之助ッ! 面《つら》を上げろ」
あんまり上品な言葉遣いではない。が、もっとも幾分|昂奮《こうふん》しているからで……。
しかし、襖《ふすま》のまえに、畳にへばり付いている人影は、身うごきもしないのだ。顔を隠すように俯伏《うつぶ》せた額部《ひたい》に、燭台の燈《ひ》が蒼白く反映《はんえい》している。
元旦のあの時、騒ぎになる寸刻前と同じ情景だ――。
一同は、グ
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