、丹波の最も得意とするところ……一気に来た。
 と、予想していたかのごとく、右近は、くわえていた刀を口から離す。その、落ちるところを空に引ッ掴んで、チャリイン! 丹波の突きを下から弾《は》ね上げながら、即《そく》、豹《ひょう》のように躍って横地半九郎へ襲い掛った。
「うむ! こいつア出来る」
 交《かわ》された丹ちゃん、にやにやして感服した。
 これで気がついたように、今まで黙りこくっていた五人の間に、一時に騒然《そうぜん》と声が起った。
「なるほど、出来る」
 遊佐剛七郎が、呻《うめ》くように繰り返した。出来る訳で、相手は喧嘩屋の先生である。
「部屋の中は、損だ。庭へ! 庭へ!」
「多勢に限る。誰か源助町へ呼びに行け」
「そうだ、先生を引っぱって来い」
「いや、先生には及ばぬ。三|羽烏《ばがらす》の一人で沢山だ」
 言う間も、右近を囲んで、ジリリ、ジリリ、詰め寄っているのだが、この源助町の三羽烏というのは、無形一刀流の大先生、神保造酒の直下に、
 大矢内修理《おおやうちしゅり》。
 比企《ひき》一|隆斎《りゅうさい》。
 天童利根太郎《てんどうとねたろう》。
 この三人を源助町の三羽
前へ 次へ
全308ページ中196ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング