、思い立つと、何でも即座《そくざ》に実行しないと気の済まない喧嘩渡世人だ。よかろう。出しぬけにつれて来て驚かしてやろうという肚《はら》、二梃駕籠を打たせて来る途中、九段下のまないた橋で、琴二郎と間違えて洒落《しゃれ》た真似をした村井長庵を、駕籠の垂《た》れから一刀を覗かせて難なく追っ払ったのち、こうしてこの築土八幡の喬之助留守宅へ、眼立たないように裏口に廻って駕籠をつけさせたのだった。
園絵を乗せて神田へ飛び帰る時の用意に、途中一つ空駕籠を拾《ひろ》って、三梃、裏木戸まえの横町に並んで下りた。
先方は何かと用心をしているに相違ない。こっちは見ず知らずの他人だ。正面にぶつかって、喬之助がいるから一しょに来いなどと言ったところで、ハイそれならお供をと気やすに出て来るわけはない。これは困ったことになった。ハテどうしたものであろうと、駕籠を出た右近とお絃、当惑《とうわく》顔を突き合わせていると、ちょうど湯殿のうらで、櫺子窓《れんじまど》の隙間からほのぼのと湯気《ゆげ》が逃げて誰か入浴《はい》っているようす、ポシャリ、ポシャリ、忍びやかに湯を使う音がする。そこは直感というやつで、これはテッキ
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