して懐しそうに出たのだ。そのうちには、言いつけて置いたとおり、屋敷の者も集まって来るであろうし、またあの、助勢《じょせい》を頼んでやった浅香氏も、駈けつけてくることであろう。それまでは、何事も穏《おだや》かに、おだやかに、飽《あ》くまでも下手《したで》に出て、この、一度血を見た若い獣《けもの》のごとき神尾喬之助を、何とかあしらって置かねばならぬ……と、思ったが、あぶない。傍《そば》へは寄れぬ。で、遠くから、うつろな笑いをつづけて、こうなると、万年平番士《まんねんひらばんし》も才が必要だ。柄《がら》になく、愛嬌《あいきょう》たっぷりに言ってみた。
「あはははは、神尾うじ、なア、済んだことは、済んだことではないか――ウウ、今ではナ、却って、わしら一同、貴殿《きでん》に同情を寄せておるのじゃ。いやまったく、貴殿が勘忍袋《かんにんぶくろ》の緒《お》を切られたのも、無理はござらぬて。今にして思えば、かの戸部近江と申すやつ、実にどうも悪辣《あくらつ》なやつであったな。よく思い切って斬りなすったよ。みんな、その、貴殿に感謝しておる訳さ。で、今日も番士一統|寄合《よりあ》いを開いてナ、連名の上、貴殿の
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