早いのか晩《おそ》いのか、どこかで寺の鐘でも鳴らないか――と、大迫玄蕃が耳をすますと、台所で洗い物をする音がかすかに聞えて、折助《おりすけ》どもの笑い声もするようだ。これで、大体時間の見当がついて、さほどおそくもないようだと、ホッと安堵《あんど》した玄蕃、もう一度考え直してみる。
不思議なのは、この刀だ。お城から帰った時、自分はこの部屋で着更《きが》えをして、その節、確かに差していた二刀を抜き取って、いつものように傍《そば》で世話をしていた奥《おく》に渡した。奥は、それを床《とこ》の間へ持って行って、この鹿の角の刀かけに掛けた。その時は、勿論、このように鞘から柄にかけて綱《つな》でなぞ絡《から》めてなかったのである。そんな馬鹿げたことをする訳もなければ、かりに子供のいたずらにしても、第一自分は、下城以来、一歩もこの部屋を出なかったのだから、そんな隙があるはずはないのである。ほんとに、宵《よい》から一度も、この座敷を明けなかったか――ウム、出た覚えはない。イヤ、待て。一度浴室へ参った。その時、帰って来て、刀はどうなっておった? どうもなっておらなかった。もしそのとき既に縛ってあったもの
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