城からお呼び出しが来て、お油の御用一切をあらためて申し付かることであろうと、毎日こころ待ちにしているのだが――。
 鼻薬《はなぐすり》として筆幸から山城守へ届けられた金は、途中、長庵の手で半分くすね[#「くすね」に傍点]られて、肝腎《かんじん》の山城守のふところへは、半金しかはいっていないのだから、山城守は内心、筆屋はけち[#「けち」に傍点]なやつだと思っている。おまけに今度は、幸吉の訴人《そにん》の件で、山城守は八丁堀へ顔向けが出来なくなったから、どうも筆屋は怪《け》しからぬという印象《いんしょう》を与えて、この話も、筆屋が楽観しているほどは、スラスラと運びそうもないのである。
 あまり長庵が、筆幸のことを五月蠅《うるさ》く頼み込むので――もっとも長庵としては、このはなしが成り立てば、いずれ筆屋から、たんまりお礼を貰う約束があるからだが――山城守は交換的《こうかんてき》に、長庵じしんに、一つの仕事を命じたのだった。
 それがうまくいったら、筆屋の油御用のほうも、奔走《ほんそう》して纏《まと》めてやろう――そうは言わないが、いわなくても解っている。山城守と長庵のあいだの、言外《げんがい
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