《まわり》を固めて、同時に家の中へ押し入ってみると、
 なるほど、それらしい職人ふうの男がひとり、娘に匿《かくま》われるようにして立っていたのだが、それにしては、本人も、顔いろ一つ変えていないし、第一、あるじの壁辰が、落ちつき払って坐りこんでしまった。
 音に聞えた黒門町の壁辰である。職人ながら、お捕物《とりもの》にかけては、与力《よりき》の満谷剣之助なども一目も二目も置いている、黒門町なのだ。もし、この男が、山城守から伝わって来たとおり、例のおたずね者の神尾喬之助なら、こうして自分達が出てくるまでもなく、黒門町の手で、とうの昔に押えられていなければならないはずだ。しかるに、家の中の空気は、和気藹々《わきあいあい》として、今まで三人で世間ばなしでもしていたらしい様子である。どうも、飛んでもない人違いではないかしら――。
 あとで、黒門町に、頭の上らないようなことになるのではないかしら――。
 と、思ったから、それ掛れッ! と下知《げち》を下しながらも、満谷剣之助、内心うす気味わるく感じているところへ、その、十手をひらめかして打ちかかろうとしていた御用の勢の真中から、やにわに、金山寺屋の
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