魔像
新版大岡政談
林不忘

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《テキスト中に現れる記号について》

《》:ルビ
(例)卑怯《ひきょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)神尾|喬之助《きょうのすけ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「ころもへん+昆」、342−上−8]
−−

   首

      一

「卑怯《ひきょう》! 卑怯ッ! 卑怯者ッ!」
 大声がした。千代田の殿中《でんちゅう》である。新御番詰所《しんごばんつめしょ》と言って、書役《かきやく》の控えている大広間だ。
 荒磯《あらいそ》の描いてある衝立《ついたて》の前で、いまこう、肩肘《かたひじ》を張って叫び揚げた武士《さむらい》がある。
 紋服に、下り藤の紋の付いた麻裃《あさかみしも》を着て、さッと血の気の引いた顔にくぼんだ眼を据《す》え、口唇《くちびる》を蒼くしている戸部近江之介《とべおうみのすけ》である。西丸《にしまる》御書院番頭《ごしょいんばんがしら》脇坂山城守《わきざかやましろのかみ》付きの組与頭《くみよがしら
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