いのは、下妻のやつらは戦わぬ前に、とても勝算のないのを知って、なんとかして平馬どのを出場不能におとしいれようとして、つけ狙っておると申すではないか。なんと各々方《おのおのがた》、この敵の仕打ちはまことに卑怯には相違ないが、この際平馬どのにもしものことがあっては、われわれ一同はまことに困却《こんきゃく》つかまつる。もとより勇豪の平馬どののことゆえ、下妻のやつらのごとき、恐るるにもあたるまいが、俗にも言う多勢に無勢《ぶぜい》――どうも心配でならぬ」
こう言って一人が分別顔に一同の顔を見廻すと、それに応じてまた他の者が口を出す。
「さればさ。その憂慮に堪えんからこそ、今宵御一同にお集りを願って、あらためて平馬どのに特別に自重用心なさるようお願いしたわけだが――」
「ところが平馬どのがわれわれの注意を鼻であしらって、いっこう意にとめて下さらんのは、いささか心外」
「と、申したところで平馬どのぐらいの腕があれば、それくらいの自信はけっして無理ではない。なんら無謀ではないのだ」
「と、いって、敵は朝夕つけ狙っているし、平馬どのは平気だし、これは困ったことができたなあ――」
こう言ってみんなが考
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