き開けた。同時に、どんと一つ、戸外から、大きく戸が叩かれた。
戸は、開こうとしている。惣平次は、六畳を這い廻って、手探りに、竜手様を捜しているのだ。戸が開くまでに、右手に握りさえすれば――あった! 戸が、あいた。
「さあさ、庄太郎や、おはいり、寒かったろうねえ。」
このおこうの声を消して、惣平次が、竜手様をかざして、三つめの、最後の願いを呶鳴った。
「庄太が元の墓場へ帰りますようにッ!」
藤吉は戸へ走って覗いたが、重い風が飛び込んで来て、炉の火を煽《あお》っただけで、そとには、誰もいなかった。
底本:「一人三人全集1[#「1」はローマ数字、1−13−21]時代捕物釘抜藤吉捕物覚書」河出書房新社
1970(昭和45)年1月15日初版発行
入力:川山隆
校正:松永正敏
2008年5月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全17ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング