うとする。おみつを打とうと藤吉が腕《て》を振り上げると、
「親分、奴はもう白状したのも同然、失礼ながらお手が過ぎやせんか。」
味噌松が出張った。
「そうか。」藤吉は手持不沙汰に、「勘、お前はこの二人についてろい。――ええ、そこで松さん、こりゃあこれでいいとして、ちょっくら裏へ出てみようじゃごわせんか。」
言いながら不審気《いぶかしげ》な味噌松を先に、藤吉はがらり[#「がらり」に傍点]と勝手の腰高《こしだか》を開けた。
四
「松さん、こりゃあどうだ。」
やにわに藤吉は蔵の前の小溝へ立った。素足に砕けて玉と散る水。味噌松はぽかん[#「ぽかん」に傍点]と眺めていた。
「この溝は横町から坂本町へ出ている、なんてお前さん、よく御存じだのう。」
溝の中から藤吉は続ける。
「つかねえことを訊くようだが、お前さん何貫ある?」
「え?」
「目方のことよ。十八貫はあろう?」
「それがどうした。」
「どうもしねえ。ただ、八州屋は小男だ、十二貫もあったかしら――。松さん、足駄の跡を見ろい。十二貫にしちゃあ深えのう。」
「――――」
四つの眼がはたと会う。
「十八貫にしたところでまだ深
前へ
次へ
全30ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング