理すべしとな」
 安積老人は、殿様のお裾をつかもうとするように、手をさしのべておいすがった。
「もとより、そのお考えなればこそ、今まで種々大事件が出来《しゅったい》いたしましても、なにごともお耳に入れず、無言の頑張り合いをつづけてきたのでございますが、明日《あす》こそは丹波を斬って、源三郎様が道場の当主にお直りになろうという瀬戸際……どうしても先方では、判定がなくては立ちあいせぬと申しておりますので、ホンの型《かた》だけ、お顔をお出しくださるだけで結構なのでございますが」
「真剣の果し合いに、判定も何もあるものか」
「もちろんでございます。そこがソノ、峰丹波の逃げ道でございまして、立ちあいなくしては、他流とはいっさい仕合いせぬというのが不知火《しらぬい》十方流の条規だと申したてて、一寸のばしに、逃げを張っておりますわけ。殿様がお立ちあいくださらば、丹波めは、仕合いを忌避する口実《こうじつ》がなくなりますので、なにとぞ源三郎様のために、御承諾くださいますよう……殿、まッ、このとおり、爺からもお願いいたしまする」
 不審顔の対馬守、
「それにしても、なぜその審判役を、余《よ》に持ってまいっ
前へ 次へ
全430ページ中301ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング