れるかもしれぬ」
「マア怖い!」
 萩乃は団扇《うちわ》で顔を隠して、
「そんなことになったら、あたくしどういたしましょう。でも、やっぱりあなた様のほうが、お勝ちになるにきまっていますわ」
 源三郎はこの萩乃を、いったいどう思っている? 愛しているのか、いないのか、誰にもさっぱりわかりません。
 そのときです……。
 雨戸の外の庭に、ポンポンと二つほど、手が鳴りました。

       二

 すぐ外の庭で、まるでかしわ手のように、手を打ち鳴らすのを聞いた源三郎は、ニヤッと笑って、
「拝んでやがらア」
 と、つぎの間の一人へ、
「丹波から返事が来たぞ」
 声に応じて、腰をかがめて縁側へ出て行った若侍が、しめ残してある雨戸から、庭前をうかがうと、すぐ下の沓《くつ》ぬぎの上に、緑の小枝が置いてあるのが、室内のもれ灯に浮かんで見える。
「なるほど、まいりました」
 若侍は笑って、手をのばしてそれを拾い上げた。
 明るいところへ持って来て見ると、葉のついた笹《ささ》である。
 墨痕《すみあと》のにじんだ紙切れが、ゆわいつけてある。
 源三郎は受け取って、
「今さら逃げを打つこともできまい。なん
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