、世を捨てた気の丹下左膳――左膳だけに、その捨て方がちょっと違う。
「おれの力ひとつで、なんとかしてこけ猿を見つけだしてえものだ。はじめ与吉が盗みだしたのを、あのチョビ安が引ったくって走り、それがおいらのふところに飛びこんだのだから、あの最初の壺こそは、真のこけ猿に相違ねえのだが、それがいつのまにか転々の、数かぎりもない偽物が現われて、こけ猿はいまどこにあるやら?――こうなりゃア、天下の茶壺という茶壺をかたっぱしから手にいれるだけだ。それには、宇治へ上下する茶壺道中をねらい……ウム! どの大名の壺にも、供の侍がおおぜいいることだから、ひさかたぶりにおれも、この濡れ燕も、思うさまあばれられようというものだ。こいつはうめえところへ気がついたぞ」
ニンマリ笑った左膳、見つけしだい壺の行列をおそって、斬って斬ってきりまくり、それでやっと、萩乃をあきらめたせつなさを忘れようというので――旅に出るといったって、べつにしたくも何もありはしない。
いつものまんまです。
汗と塵によごれて、ところどころ黄色くなった白の着物に、すりきれてしんが出ていようという博多の帯を貝の口に結んで、彼にとっては女房
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