と、そのおれのはいった鎧櫃が、道場の正面へかつぎ出されて、その前で遺跡《あとめ》相続のかためが始まったのだ。道場のあるじに直ろうとしているのは言うまでもなく峰丹波」
萩乃があとを受けついで、
「ハイ、丹波は、二世十方斎の名と、継母《はは》お蓮の方とを天下はれて手に入れようとの魂胆でございます。そのために、わたくしの……」
言いさした萩乃の頬は、行燈の灯を受けて、秋の入り陽にはえる紅葉のように赤い。
むすめ心にためらったが、やがて思いきって、
「わたくしの――夫ときまった源三郎様を亡き者にしようとし、また、このわたくしをも押しこめ同様に……」
すると、左膳、思い出したように笑って、手近な大刀を引きよせてホトホトと鞘《さや》をたたきながら、
「コレ、濡れ燕、おめえもよく働いてくれたが、残念だったなア、丹波をうちもらしたのは」
じっと何か考えこんでいたが、不意にほがらかに、
「サ、これでいい。萩乃と源三郎を会わしてしまえば、丹下左膳の役目はすんだのだ。サア、おれはこれから……」
濡れ燕をトンと杖について、左膳、やにわに起とうとするから、源三郎はあわてて、
「オイ、ちょっと待ってく
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