りつき、やはり石屋の金さんから、丹下左膳らしい浪人者が、さっき長屋へたずねてきたが、人を追ってすぐ日光へ出かけたと聞いた伊賀の暴れん坊、気の早いほうでは、人後に落ちません。司馬道場から引き連れて来た弟子三名を従えて、これも道々この店で脚絆、わらじ、あの店で笠《かさ》に柄袋《つかふくろ》といったように、旅の装束をととのえつつ、紫いろのあけぼのの江戸をあとに……。
 江戸から二里で千住《せんじゅ》、また二里で草加《そうか》、同じく二里の丁場《ちょうば》で、越ケ谷、粕壁《かすかべ》――。
 日光街道に、三組のふしぎな旅人が、それぞれ先を望んで点々として追うがごとく。
 ところで、ここに。
 つぎの動きは、まずあの、大人とも子供とも得体の知れないチョビ安を中心に、まき起こるに相違ないとにらんで、この間じゅうからずっと、あのトンガリ長屋の付近へ張りこみ、それとなくようすをうかがっていた男がある。
 ほかでもない、つづみの与吉。
 こやつ、いつ江戸へまい戻ったものか、若党|儀作《ぎさく》の壺のあとを追って、せっかくうばったのを、また取り返されたという失敗にもこりず、頭をかきかき、またあの司馬道場の峰丹波へ、うまくとりいったのだろう。
「ヘエ、こんどこそはあっしが、あのチョビ安ってエ大人小僧をつけねらって、ナアニ、きっとこけ猿の茶壺を手に入れてお目にかけやす。ヘッ、お茶の子さいさい」
 例によって安請合い、おおいに丹波の前にいい顔をしておいて、それからずっとこのトンガリ長屋を夜となく昼となく、見張りはじめたというわけ。
 与吉のやつは、チョビ安に、忘れられない恨みがあるんです。
 そもそもこの事件の当初。
 うまく品川の宿舎《やど》から、こけ猿の壺を盗み出したのに、途中でそれをうばって逃げ出したのが、あのチョビ安。あれがこの紛糾のもととなったのですから、チョビ安に対する与吉のうらみたるや、山よりも高く、海よりも深い。
「こんどこそはあの小僧のやつを、とっちめてやるぞ」
 と、昼夜兼行で、ねらっていると。
 すると、今夜のこと。
 誰かわからぬが、偉そうな覆面の侍が、この長屋をおとずれたと思うまもなく、チョビ安と泰軒が、連れだって旅へ出たようす。見送りの長屋の連中のうしろに立って、それとなく聞いたところでは。
 日光へ……という。
 ハテナ? と思うひまもなく、こんどはたえてひさし
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