し》。
七
お梶は一生懸命に、身ぶりをつづけて、背中を壁にすりつけたり、壁の前に立って、しきりに土を塗る手つきをするやら……左官の妹だけに、壁屋の手まねは堂にいっている。
かと思うと、こんどは、お蓮様とお美夜ちゃんを指さして、眼をつぶり、呼吸《いき》をつめて見せるのは、「死ぬ」という意味を表わすつもりだろうが、まるで踊りの手ぶりを見ているようで、こんなことでわかるはずはない。
お蓮様とお美夜ちゃんは、あっけにとられて見まもるのみ。
お梶はもどかしそうに、身もだえしていたが、やがて、新しい方法を思いついたと見え、急に、にっこりすると同時に、
「ウウウ――」
と、異様にうめきながら、母娘《おやこ》の手を取ってグイグイ引き立てる。
雨中《うちゅう》のすき間から、一瞬間、サッと青白い光が射し込んで、畳の目をくっきり描きだすのは、雷《らい》が、ちょうど頭の上へ来ているらしい。
戸障子のはためき、屋棟《やむね》のうなり、この小さな家は、今にもくだけ飛びそうである。
灯影《ほかげ》の暗い室内に、狂気のようにあせり動くお梶の影だけが、大入道のようにゆらいで、なんとも不気味な景色であった。
唖美人……それは、うつくしい獣を連想させる。
お美夜ちゃんは、もうすっかりおびえきり、お蓮様も、何ものかにつかれたように、母娘《ふたり》はお梶に手を取られるまま、フラフラと膝を立てて、
「コレ、何をするの、お梶」
「母ちゃん、こわいよウ!」
うわア、うワア!……というような声を、お梶はつづけざまに発しながら、全身の力をそのかぼそい腕にこめて、母と娘を壁に押しつけた。
そうしておいて、手早く壁土を塗りこめる手つき。
これでもわからないか!――と言わぬばかりのもどかしさが、顔いっぱいにあらわれて、お梶の眼は、必死の涙にうるんでいる。
お蓮様とお美夜ちゃんは、白痴の相手をして遊んでいるような、気恥ずかしいようすで、されるとおりになって壁の前に立ちならんでいたが、お梶がいつまでも、左官のしぐさを繰り返すだけなので、お蓮様ははじめて、オヤ! これは変だ。何か重大な意味があるのでは……。
と、思ったとき!
フと胸をかすめたのは、遠い子供のころ、乳母か誰かに聞いたことのある、あの、「もの言はじ、父は長柄の……」の人柱のこと!
大きな土木工事には、土の神、木の神
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