、この、ふだんからこころよく思っていないふたりが、はいってきたので、ツンとすまして横を向いていると――身長六尺に近く、でっぷりとふとって、松の木のようにたくましい丹波だ。縁側を踏み鳴らしてくだんの植木屋に近づくなり、
「無礼者っ!」
と一喝。植木屋、へたばって、そこの土庇《どびさし》に手をついてしまうかと思いのほか、
「あっはっは、大飯食らいの大声だ」
ブラリ起ちあがって、立ち去ろうとする横顔を、丹波のほうがあっけにとられて、しばしジッと見守っていたが、
「何イ?」
おめくより早く、短気丹波といわれた男、腰なる刀の小柄を抜く手も見せず、しずかに庭を行く植木屋めがけて、投げつけました。
躍るような形で、縁に上体をひらいた丹波、男の背中に小柄が刺さって、血がピュッと虹のように飛ぶところを、瞬間、心にえがいたのでしたが……どうしてどうして、そうは問屋でおろさない。
ふしぎなことが起こったのだ。
あるき出していた植木屋が、パッと正面を向きなおったかと思うと、ひょいと肘《ひじ》をあげて、小柄を撥《は》ねたのだ。
飛んでくる刃物を、直角に受けちゃアたまらない。平行に肘を持っていって、
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