とひとこと話しさえすれば……」
「何を言わるる。御礼の不知火銭を拾うのは、拙者にきまっておる。バラバラッときたら、抜刀して暴れまわる所存だ。武運つたなく敢《あえ》ない最期をとげたなら、この髪を切って、故郷《くに》なる老母のもとへ――」
決死の覚悟とみえます。
萩乃がお目あてなのは、さむらいだけじゃアない。町内の伊勢屋のどら息子、貴賤老若、粋《すい》不粋《ぶすい》、千態万様、さながら浮き世の走馬燈で、芋を洗うような雑沓。
金も拾いたいし、お嬢さんにも近づきたい……欲と色の綯《な》いまぜ手綱だから、この早朝から、いやもう、奔馬のような人気|沸騰《ふっとう》……。
妻恋小町の萩乃さま。
本尊が小野の小町で、美人というと必ずなになに小町――一町内に一人ぐらいは、小町娘がいたもので、それも、白金町《しろがねちょう》だからしろがね小町《こまち》とか、相生町《あいおいちょう》で相生小町《あいおいこまち》などというのは、聞く耳もいいが、おはぐろ溝小町《どぶこまち》、本所割下水小町《ほんじょわりげすいこまち》なんてのは感心しません。ある捻った人が、小町ばっかりで癪《しゃく》だというので、大町《
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