うちはまだいいが、
「おいっ! まいれっ! ここで一丁稽古をつけてやろう」
「何をっ! こちらで申すことだ。さァ、遠慮せずと打ちこんでこいっ!」
「やあ、こやつ、遠慮せずに、とは、いつのまに若先生の口調を覚えた」
 なんかと、てんでに荷物から木剣を取り出し、大広間での剣術のけいこをされちゃア宿屋がたまらない。
「足どめ稲荷が、妙なところへきいたようで」
「どうも、弱りましたな。この分でゆくと、もう一つ、足留稲荷の向うを張って、早|発《だ》ち稲荷てえのをまつって、せいぜい油揚げをお供えしなくっちゃアなりますめえぜ」
 本陣の帳場格子のなかで、番頭たちが、こんなことをいいあっている。
 品川のお茶屋は、どこへ行っても伊賀訛りでいっぱいです。そいつが揃って酔っぱらって、大道で光る刀《やつ》を抜いたりするから、陽が落ちて暗くなると、鶴岡の前はバッタリ人通りがとだえる。
 こういう状態のところへ、植木屋姿の源三郎が、ひょっこり帰ってきました。

       二

 立ち帰ってきた源三郎は、てっきり司馬先生はおなくなりになったに相違ない……と肚をきめて、二、三日考えこんだ末、
「おいっ、ゲ、ゲ、
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