のれッ何やつ? トトト脱《と》れ覆面《ふくめん》を? ウヌ! 覆面を剥《は》がぬかッ! ツウッ……!」
そして。
ともし灯《び》低く、白《しら》みわたる部屋にこんこんと再び眠りに沈んだ大膳亮――畢竟《ひっきょう》これはうつし世の夢魔《むま》、生きながらに化した剣魅物愛《けんみぶつあい》の鬼であった。
明けゆく夜。
城外いずくにか一番|鶏《どり》の声。
やがて、お堀ばたの老松に朝日の影が踊ろうというころおい。
中村の町の尽《つ》きるところ、月輪一刀流|月輪軍之助《つきのわぐんのすけ》の道場では、江戸へつかわすふしぎな人選の儀が行なわれているのだった。
月輪一刀流……とは。
天正|文禄《ぶんろく》の世に。
下総《しもうさ》香取郡飯篠村の人、山城守家直《やましろのかみいえなお》入道長威斎、剣法中興の祖として天心正伝|神道流《しんとうりゅう》と号していたが、この家直の弟子に諸岡《もろおか》一|羽《う》という上手《じょうず》あり、常陸《ひたち》えど崎に住んで悪疾を病み、根岸|兎角《とかく》、岩間小熊、土子泥之助なる三人の高弟が看病をしているうちに、根岸兎角はみとりに倦《あ》き、悪疾《あくしつ》の師一羽を捨て武州に出で芸師となり、自派を称して微塵《みじん》流とあらため世に行われた。
ところが。
あとに残った小熊と泥之助は、病師の介抱を怠らず、一羽が死んでのち、兎角《とかく》のふるまいをもとより快からず思って、両人力をあわせ一勝負して亡師の鬱憤《うっぷん》をはらそうとはかり、ついに北条家の検使を受け、江戸両国橋で小熊と兎角立ち会い、小熊、根岸兎角を橋上から川へ押しおとして宿志をとげた。
根岸兎角は、師の諸岡一羽のもとを逐電《ちくでん》して、はじめ相州小田原に出たのだが、この兎角、伝うるところによれば、丈《たけ》高く髪は山伏のごとく、眼に角《かど》あり、そのものすごいこと氷刃のよう――つねに魔法をつかい、人呼んで天狗の変化《へんげ》といい、夜の臥所《ふしど》を見た者はなかった。
愛宕山《あたごやま》の太郎坊《たろうぼう》、夜な夜なわがもとに忍んで極意秘術を授《さず》けるといい広め、そこで名づけたのがこの微塵流《みじんりゅう》。
その後江戸に出て大名、小名に弟子多かったが、三年たって諸岡一羽が死ぬと、相弟子の岩間小熊と土子泥之助、兎角を討ちとるために籤《く
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