わしはとうの昔からすべてを知っておる、何からなにまでスッカリ調べが届いているのみか、もうそれぞれに手配ができておるのじゃから、安心して――」
「安心して、ひとつ碁といくか」
「さよう。安心して碁と来い」
ふたりはすばやく顔を見合って、同時に爆発するように笑いの声をあげたが、泰軒はすぐさま真顔になって、
「しかし、こうのんびりと碁を打っておるあいだに、おぬしの張った網のなかの大魚は、だいじょうぶだろうな?」
「まず逸《いっ》する心配はない」
「さようか……しかし」と泰軒は盤のうえの黒白ふたつの石をさして、「こう――この石がともに当方の手に帰せんうちに、いま先方を引っくくられては、こっちが困るぞ」
「さ、そこが私事と公法。わしの苦衷《くちゅう》もその間にあるよ。この二石……」
手を伸ばした忠相、ふたつの石を左右にひき離しながら、
「これが目下の状態。しからば当分このままにして傍観するか」
「うむ。早晩必ずこうして見せる」
泰軒の手で、また二つの石がひとつになる。
「そうか。だが、今のところは――」
と忠相は黒の石を手もとへひいて、そばへもうひとつ、同じく黒をパチリと置いた。
「これはこれに属しておるナ」
「そんなら、こっちはこうだ」
いいつつ泰軒も、白に並べて白の石をひとつ、力強く打って忠相を見る。
「フウム!」と腕をこまねいた忠相、「が、泰軒、黒には黒で仲間が多いぞ」
と、ガチャガチャとつかみ出した黒の石を、べた一面に並べて、もとの黒石をぐるりとかこんでしまった。
「おどろかん。ちっともおどろかん」
にっこりした泰軒は、すぐに白の一石をとって白の側へ加えた。
「そっちがその気なら、ひとつこういくか。助太刀御免というところ……」
「ハハハハ!」忠相は笑いだした。「気のせいか、いまおぬしのおいた石はどうも薄よごれておるわい、天蓋無住《てんがいむじゅう》の変り者じゃな、それは、はっはははは」
「こりゃ恐れ入った! おぬしの眼にもそうきたなく見えるかナ――」
と、泰軒、首をひっこめてあたまをかきながら、
「それもそうだが、はじめに黒の一石をわが有《ゆう》にしたそっちの石も、つまり見事な男ぶり……いやなに、石振りではないはずだぞ。虧《か》けとる、ハッハッハ右が欠《か》ける」
「お! そうだったな。眼糞《めくそ》鼻糞《はなくそ》を笑うのたぐいか――しからば、これは
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