なに、嫂上がお帰りになったと? 兄上の気持ちも察せずに、賢《さか》しら立てに勝手なことをして、一夜を敵将の陣営に送り、ちぇっ! どんな顔をして戻って来るか。いや、その面がみたいものだ。
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合爾合《カルカ》姫が下手より、夢遊病者のように現れ、群集をも意識しないふうで、そのまま城門へはいろうとする。その、憑きものでもしたような様子に、一同唖然として、無言で道を開く。
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台察児《タイチャル》 (いきなり合爾合《カルカ》の腕を掴んで)嫂上! よくも思いきって、こんな汚らわしいことをなされましたな。どの面下げて帰って来られた。さ、兄上がお待ちかねだ。
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と遮二無二引きずって城中へ拉し去る。避難民の群れは、感謝の心を現すべく、われがちに、手に手に合爾合《カルカ》姫の袖、裳裾などを押し戴きながら続く。入れ違いに城門より、従者に荷物を担がせた金の商人、および、花剌子模《ホラズム》の[#「花剌子模《ホラズム》の」は底本では「花剌子模《ハラズム》の」]回々《ふいふい》教伝道師、転がるように走り
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