る。幕。
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   第三幕 第一場

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札荅蘭《ジャダラン》城、城門の景。砂漠のなかに濠をめぐらし、高い石垣を築き、石を積み上げたる厳重な城門の前。同じ時刻。
序幕第一場の避難民多勢、首を伸ばしてはるか彼方の成吉思汗《ジンギスカン》軍の屯営のほうを見守っている。
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男一 とうとう昨夜《ゆうべ》、合爾合《カルカ》さまはお帰りにならなかったようだな。
男二 おれたち部落の者の身代りになって下すったのだ。お痛わしいことだ。
女一 あのお優しい奥方様が、恐しい成吉思汗《ジンギスカン》の陣屋で、どんな目にお遭いなされたかと思うと――。
男三 札木合《ジャムカ》の殿様は、もう気違いのようになっている。おお、ここまで、殿様のどなり叫ぶ声が聞えて来るようだ。
男四 しかし、殿様の御心中を察すると、それも無理がないなあ。
男五 軍には負ける。奥方まで奪られるじゃあ、まったく、浮かぶ瀬がないよ。
女二 (遠くを指さして)あれあれ! 成吉思汗《ジンギスカン》軍では、にわかに天幕を取り毀しまし
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