を屠ろうとしても、札荅蘭《ジャダラン》に藩主|札木合《ジャムカ》、その弟、この台察児《タイチャル》のあるかぎりは、めったにこの城を渡しはしないぞ。(頭上の種族旗を振り仰いで)この名誉ある札荅蘭《ジャダラン》族の旗に対しても、誰が、誰が成吉思汗《ジンギスカン》などに降参するものか。おい、どうしたのだ、ここは備えが手薄ではないか。
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下手、要塞の端れへ走り行く時、僧侶ら三人を認めて、
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台察児《タイチャル》 こらっ、邪魔だっ! 一人でも口を減らしたい籠城に、何の役にも立たぬ他国の坊主や町人が逃げ込んで――うむ、そうだ、貴様らを殺して肉を食えば、もう二三日城を持ちこたえることができよう。愚民を騙《たぶら》かして坐食しておる坊主と商人、どっちも肉の柔いことだろう。臆病者め、そこ退けっ!
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城寨に駈け寄り、堡塁の陰に身を潜めて、銃眼よりしきりに矢を射落す。武士三四人もそれぞれ銃眼から射る。合戦の物音寸時も止まず。僧侶ら三人城中へ逃げ込もうとすると、同じく城内から城下の避難民多勢、農夫
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