るという趣向も、受けたのだ。がお駒ちゃんはほんとのことをいうと、あまり感心しなかった。こんなものよりも、その前に二、三度出た、日本一太郎の指先の手品に心から感心していた。
 出幕になって、お駒ちゃんは、羽衣天人のような着つけで舞台に立った。気おくれがしたが、一生懸命に踊った。見物のほうは一面の顔で、その顔を見わけることはできなかった。白いもの、黒いもの、黄色いものが重なり合って、ぼやけているだけだ。
 舞台からすぐ近くのところに、磯五が、お美代とおしんをつれて、左右にすわらせて見物しているのなどは、お駒ちゃんののぼせた眼にははいらなかった。何も見ず、何も感ぜずにただ踊った。からだいっぱいと心いっぱいで踊った。かすかに感嘆の声を聞いたようでもあった。
 日本一太郎の扮《ふん》している三保の漁師が眠っている上を軽く飛んで踊るところへきた。ここには、いろいろとむずかしい所作があるのだ。お駒ちゃんは夢中でそれをつづけていた。舞台のあちこちに蝋燭がついて、それが、お駒ちゃんの袖や裾にあおられて高く低くゆらいだ。その加減で、書き割りの雲がかげったり浮かんだり、走ったり止まったりするように見えた。

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